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国宝太刀無銘一文字(山鳥毛)刃文帯 制作秘話④

突然始まった国宝太刀無銘一文字山鳥毛刃文帯制作秘話のシリーズ記事。
昨年夏の山鳥毛刃文帯の発表の一連の流れをTwitter中心に展開することになり、リアルタイムで情報を求めていらっしゃる層に僕たちのものづくりを知っていただく機会が増えましたが短文のつぶやきでお届け出来ない内容を補足するために文章化しているというのが本当のところです。
当初は3話~5話でまとめる予定でしたがあまりの反響の大きさに10話宣言してしまいました。
ここまでお読みくださいまして本当にありがとうございます。急遽連載開始の山鳥毛の刃文帯制作秘話。よろしければあと7話ほどお付き合いくださいませ。
岡山県立博物館で「名刀 福岡一文字の光彩」と題したリニューアルオープン記念の展覧会が4/1~5/7の期間で開催され「太刀 無銘一文字(号 山鳥毛)」は4/1~9の期間展示されます。
それに向けてカウントダウン的に書かせていただいてます。
 
従来からの弊社ファンのお客様、お取引先様におかれましては「さんちょうもう⁇山鳥毛って何?刀剣⁇ひろやさんはどこへ行く⁇」と驚いていらっしゃる方も多いかと思いますし現にそのようなお声も頂戴しております。
私は職人であり作家活動を行っております。
私の扱う愛刀は絞りのくくりで使う肥後守や小刀ぐらい。
刀剣類は未知の世界はあるもののテーマのあるものづくりを得意とする者。
日本の伝統文化の刀剣を柱の中心としたテーマのものづくり。何の矛盾もないと思います。
歴史が大好きでまさに私向きのモチーフだったのかもしれません。
業界には拵えや鍔、倶利伽羅龍や梵字をモチーフにした商品や作品は多くないとはいえ存在しますが刀剣、刃文と向き合ったものは知る限りありません。
 刀剣と帯。
誰もやったことがないからこそ向き合い成立させてみる!と決めスタートするとマイスター魂との親和性たるや!
 
ところで上杉謙信、景勝の愛刀として有名な太刀・山鳥毛。
愛刀家で知られた謙信の所蔵品より自身も卓越した鑑定眼をもつ上杉景勝が特に気に入ったものを選抜した名刀リストの「上杉景勝・御手選三十五腰(おてえらびさんじゅうごよう、さんじゅうごこしとも読むそう)」の太刀・山鳥毛は謙信佩刀二十八腰のひとつ。
上杉謙信公のご幼名は「長尾虎千代、景虎、政虎、輝虎」謙信と名乗るまで名前に虎がついてました。寅年生まれの由縁にしても凄いですね。
享禄3年 1月21日(旧暦)西暦換算1530年2月18日生まれ、寅年の歳男としては41回目、謙信生誕492年の昨年2022年(令和4年)は毘沙門天の遣いとなる虎が現れたことに由来する寅年。
これは巡り合わせ以外ないんじゃないか??そう思いました。

そんな理由から仕上げるならば後回しにせず寅年の令和4年内に仕上げるべきと捉えました。

鉄は熱いうちに打ての方式です。

 

刀剣モチーフ、しかも人気の名刀「山鳥毛」冷静になって考えると空恐ろしい重圧が襲ってきます。

やるかやらないかそんな話じゃなくお受けしたからにはお役目果たさなければこれ死ぬな。

そんな気持ちが湧き上がってきました。

中途半端に扱ったらとんでもないことになることだけは理解、覚悟を決めました。

 

令和5年3月19日更新(つづく)