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国宝太刀無銘一文字(山鳥毛)刃文帯 制作秘話③

今でこそ本当によかった、よくぞ私をご指名くださった!!とつくづく思う「山鳥毛刃文帯」の開発。


プロジェクト立ち上げ当初は「男なら危険をかえりみず、死ぬと分かっていても行動しなければならない時がある。負けると分かっていても戦わなければならない時が…(劇場版 銀河鉄道999より)」のような心境でした。


実際、開発は困難を極め原材料費、素材のテスト、デザイン、取材なにもかもが自己責任。


よくぞうぶ鳥の羽根の毛のようなミリ単位のチャンスを手繰り寄せることが出来たなと思います。

新商品開発とは予算を確保し、試作品の製造を経て製造・販売コスト等の折り合いなども考慮しながら細かく調整を加えるものですが「山鳥毛」帯は100%思い先行型ゼロからの立ち上げ案件。

思いだけでは企画、商品開発は成立しないもの。


今となっては「勝つための戦、始めるとしよう(山鳥毛 刀剣乱舞より)」の心持ちです‼️

 DMMオンラインゲーム刀剣乱舞(Pocket)を2022年8月末に始めましたが、山鳥毛の帯のお話をいただいた際は「とうらぶ」関連の話は知るよしもありませんでした。


今ならマーケティングが…刀なんて…云々の声は軽くクリアできるプレゼンが可能ですが当時は一切が未知。

取材のため度々備前おさふね刀剣博物館へ通うことになりました。同時に京都のかたなに関する所縁のある粟田口、三條小鍛冶宗近にまつわるお社、工房を構えている山科の歴史に「玉鋼」と古代たたらの足跡を訪ねるなど知らないなりに自然と学びを深める行動に出ておりました。


毘沙門堂という山科を代表する寺院へ、毘沙門天の生まれ変わりという上杉謙信公を感じたくて仕事の合間ふらりお詣りに立ち寄ることも多かったです。がっつりの取材期間はおよそ2か月。

その間みやこ刀剣祭りがみやこめっせで開催されていて押型という刃文を写す手法を初めて認識したり初心者レベルの刀剣の知識で今や語るも恥ずかしい内容で申し訳ないのですが知らないなりに必死でした。

 

さて、ようやく本題!!

 

「どのように仕上げるべきか??」

白生地に素描きで一本ずつ仕上げる染め技法や型染めも選べますが、織元と独自の生地を製作し続けている機の職人のラインがあり織物が相応しいはずとまずは図案とデザイン、素材の吟味に入りました。

銀糸や各種金属糸を組み合わせてこの色彩、というよりも複雑に乱れる刃文を再現すべきと感じ普段の染め優先の仕事ではなく織物を主体としたものづくり、仕上げで行こう!そう決めて西陣の機屋めぐりのスタートです。

 

私の母方大原家の祖父母は北野天満宮の近くで手機の織物業を営んでました。

大原のご先祖は愛知県の熱田神社(熱田神宮)代々の社家の神官で刀剣に関することにいつか関わりたい思いがありました。

明治維新で社家が解散、うちの大原は京都へ。そんな背景もあり加えて、父方藤井の高祖父・藤井伊助さんが今宮神社の近代西陣織の稲田玉鳳碑の設立発起人に名前が刻まれていることを知りなにも染色家にこだわらなくても!と腑に落ち織物図案を仕上げることに専念したのです。

 

2023年3月16日更新(つづく)