帯の制作と一口で言ってもいろいろなスタイルがあります。
先染めの糸を織りあげる織物としての帯、帯の白生地に絵を描き染め上げる後染の染め帯仕上げ。
私たちの工房は染色加工をベースにしたオリジナル自社ブランド作品の展開がベースです。
作家ブランドとして丹後や西陣の絹織物の機でネーム入りのオリジナルの地紋を製作するなど白生地の素材を手がけた上で染色あるいは絞りの加工を行います。
(生地の仕入れもあります。)
弊社はさまざまな企業さまからOEMとしてアニバーサリーの記念品の生地プロデュース、ご希望の御品への縫製仕上げの制作実績も複数あります。
定石であれば「山鳥毛」の帯地は製作出来る可能性が高いと見立てましたが何せ刀剣の柄をやったことがなく全貌がみえない。
この複雑な「刃文」を染め技法の友禅やろうけつ染で表現するべきなのか、生地に地紋のみで表現するべきなのか。
出来なくはなさそうということだけピンと来たもののどこから手を付ければいいのか解らない。
加えて完成しても審査がありそれに通過してからでないとお仕事にはならないというハイリスクな案件。
当然ながら会議です。「刀は怖い、危なそう、予算面の裏付け、保証、失敗したら誰が責任をとるのか」いろいろな議題や意見が出ました。
資金面しかり、あるのはアイリーさんからのオファーとテレビせとうちクリエイトさんの山鳥毛の高画質写真の使用許可のみ。
振り返るとちょうど一年前の今頃の突然のご訪問。アイリーさんはきもの専門店商社経由でご担当者がいます。「双方にご迷惑かかるはずなので絶対にやめてください」その強いお声は今も忘れません。
ビジネスの建前上あたりまえだと思います。
山鳥毛の姿を写真を通じて観、刃文を追いかけるうちに唯ならぬ凄さを理解、何としてもこれは具現化せなあかんやろ!とクリエイター魂に火がつき、個人としてものづくりのスキルアップのための試作に取り掛かる決意を密かに固めました。
どこからスタートすべきか?やっぱり日本刀といえば長船、山鳥毛が所蔵されている備前おさふね刀剣博物館へ向かってました。4月の中旬頃だったと思います。
御刀の知識はゼロに近く刀の見方など全くわからない中瀬戸内市の観光協会の理事の方にご紹介いただいた刀匠・安藤広康さんが太刀と打ち刀の違い、薙刀や槍もふくめて刀剣であることなど刃文の見方のご解説から山鳥毛の貴重な資料を懇切丁寧にご教示くださいました。
貴重な鍛冶仕事の合間、取材にお付き合いくださいました。安藤刀匠なしに山鳥毛の刃文帯は生まれなかったと思います。心から感謝申し上げます!!その節は本当にありがとうございました。(安藤刀匠はまだまだご登場予定)
京都に戻って何をすべきか考えるよりも先に絵を徹底的に描くことから始めておりました。この時点ではまだどんな仕上げをするかはまだ未知数でした。
令和5年3月15日更新(つづく)