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国宝太刀無銘一文字(山鳥毛)刃文帯 制作秘話⑨

さて!ラスト2話のまとめに入らせていただきたいと思います。あっという間の振り返りです。

備前おさふね刀剣博物館の太刀・山鳥毛の展示にあわせ突如デビューした山鳥毛刃文帯。Twitterを中心に大騒ぎになってることを知らず「山鳥毛」の刀身、ホンモノの刃文を観るため備前長船入りした際、ご来場の皆さんの熱たるやなんだこれは!!!の驚きの連続でした。知らなかったとはいえ、里づくりプロジェクトが地域レベルで一丸となり盛り上がってる観光振興の仕掛けに感動。加えてなんだか楽しそうなアニメとのコラボ。熊本のお仕事に入る前に備前長船へ途中下車して立ち寄った8月末、遅まきながら刀剣乱舞の「山鳥毛」さんということを認識。にわかにTwitterと刀剣乱舞を始めました。最初は個性の強いキャラクター達に戸惑いつつも、なるほどこれか!!とすぐに理解。今や大ファンのとうらぶの世界に入り浸るプレイヤーにまで育ちましたが、スマホゲームをしないことで有名な私が毎日の日課にすることになるとはの出会いでした(笑)ただし今後他の刀剣の御刀の帯や裂地を手掛けることがあるとしても「本体」の方の特徴からの顕現化を心がけると思います。

前頁で今回の山鳥毛の帯作成で西陣織の先生と呼ばれますと書きましたが世に出るまで、業界界隈ではいつから鍛冶屋目指すようになったんや?!と揶揄されたりもしました。好きで惚れ込んでやってることを説明してもわからない人には説明の仕様がないし、そもそもがオタク度満載の世界観。打算的なビジネスから入らなくて本当によかったと思います。ものづくりのビジネスのバランスも備えてたから成立したのかもとつくづく。

刀剣の収集家でもない私が数多くの取材を通して知り得たものづくりの卓越した技、御刀を生み出す工程は鍛人、鍛師、刀鍛冶、刀匠…研磨、金工、柄巻、漆、拵えなど各専門家の職人がいて洗練を極めた技のオンパレードの結実。魂の具現化を武具として用いてきた我らがご先祖、日本人の精神性に今一度触れられるチャンスかと思いました。「武」という字は「戈」ほこを「止」めるためのもの、争いを止めるための道と学生時代に学んだ少林寺拳法でよく聴かされてました。

この時代だからこそ平和を考えるためにも必然だと思いました。日本刀趣味のやばい人というイメージを持つ人とKATANAという見方をしてくださる方、刀剣ブームの熱狂的なファン層からの反応、随分いろいろな認識の違いがあるものだなと随分と学ばせていただきましたが、初心者だからこその驚きとわくわくの刀剣の学び、リスペクトから国宝太刀無銘一文字(山鳥毛)と向き合えたのかもです。本気で打ち込んだ研究は、商品化として陽の目をみた企画と成りましたが実現不可からの顕現化。実際僕の思惑なんかは関係なく、動かされてる感をひしひしと感じながらの半年、自分の意思よりもなにより困難に打ち勝つチカラが山鳥毛さんそのものなんだと思いました。


令和5年3月25日更新

第9話おわり(つづく)