究極のコンペ形式、手探りの状態からようやく着地点がみえたかのように思えたものづくり。
アイリー様は私にボールを投げかけたものの、作家とお店をつなぐエージェント側のご担当レベルで猛反対の状態。当然、ソフトランディングは見込めません。
いつ仕上がるかの見込みすら付かなかった山鳥毛の帯サンプル裂地を手にされたアイリーの社長様は刃文の再現度の高さに感銘をうけられ小躍りされたそうです。
そこから急転直下、審査のために瀬戸内市やテレビせとうちクリエイト様へ走られることになり同時にエージェント側に山鳥毛の帯を作りたいと猛アタック、交渉は軟着陸と行かなかった様ですがご尽力が実り私の方にお仕事として契約内容と諸条件の問い合わせが届きました。
最終着地点の設定を当初スタートから夏と決めていた逆算の仕事が見事にはまった瞬間です。
山鳥毛刃文のサンプル裂地の完成度の高さ、とてつもない圧を放つ刃文の美しさを世に出せることに動き出した企画。
その背景には備前長船刀剣博物館の夏季特別展「長船の系譜-700年の栄枯盛衰」2022年8月11日~9月25日の会期で展示される国宝太刀無銘一文字(山鳥毛)のお披露目に合わせ、同館併設のふれあい物産館で山鳥毛を活用した開発プロジェクトでジュエリーやサングラス、オゾン製品、パンやコーヒーなどアイリー様開発のオリジナル商品の展示即売が決まっていたことが大きく、そこに間に合わせたいという想いが結実したプレゼンだった模様です。
そこに帯も加えて発表したい。
私も企画が通って安堵すると同時にそこからが私の本格的な仕事!
納期まで2週間もありませんが約半年の苦労を思えばなんてことはない。
裂地から帯へまずは初号機の完成を仕上げるために奔走することになりました。
当時、熊本のお仕事の帰路、途中下車して備前長船入りすることが度々ありました。
茶の湯の勉強の延長で熊本城や水前寺公園成趣園の古今伝授の間に立ち寄るなどしていた訳ですがそれが今につながる刀剣ワンダーランドへの入り口になっていたことを知る由もありませんでした。
京都の機屋は幸いにして夏の閑散期、私の無茶ぶりに応え一本の帯を織り上げてくれたのです。
第7話おわり
令和5年3月22日更新(つづく)