『ちはやぶる かみよもきかず
たつたがは からくれなゐに みづくくるとは』
大和国の龍田川に散り流れる紅葉の華麗な美しさをたたえた歌です。
神代の昔でさえも聞いたことがないほど美しい川面一面に紅葉が
散り浮いては流れる様はこの龍田川を絞りで真紅色に染めた様だ…という意訳になるそうです。
小倉百人一首にある在原業平朝臣(ありわらのなりひらあそん)の歌です。
水くくる=絞り染め。
「みづくくる」の言霊の響きがなんともいえない香しい
万葉の昔を感じさせてくれます。
万葉ついでに当時の染色技法のお勉強たいむ。
多少なりとも着物をご存じの方は【天平の三纈(さんけち)】お聞きしたことがあるかと思います。
天平の三纈とは万葉かなを使った日本最古の和歌集の万葉集が作られた天平文化の時代の生地を防染する染色技法を指します。
「纈(けち)」とは防染を意味し「臈纈(ろうけち)」「纐纈(こうけち)」「夾纈(きょうけち)」の三つを合わせ
『天平の三纈(さんけち)』と呼びます。
ろうけちはロウケツ染め、こうけちは現在の絞り染め、きょうけちは板締めにあたります。
コロナ時代に発生した単語、いま最も必要な三密とともに覚えて頂ければと思います。
この時代の板締め技法は厳密に言うと現代の板締めとは異なり文様を刻んだ彫刻された板同士を染料を流し込むことにより防染する染色技法だったそうですが「きょうけち」も現代では絞り技法に分類されております。
ろうけちは正倉院展などでも観ることができる蜜蝋を使用したそうです。
こちらの作品は私が現在師事しております書家の清高院月蓮(寺山すみか)先生と今年の1月に祇園のギャラリーで染色と書の『染色家 藤井裕也 / 書家 清高院月蓮』二人展をさせていただいた際のコラボ作品です。