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27.水無月の朔に。

水無月の朔、工房夏のしつらえに。


水無月とは水が無い月ではなく「水の月」を意味します。


6月は衣替えの月。袷から単衣に衣服を変えるようにふすまと入替え。

風通しもよく目にも涼やかな葦簾戸。


庭作務に打ち込み、随分と風通しの良くなったわが社の庭園。

チリひとつ払えない人がウィルスへの最大限の注意なんて出来る訳がないと気付いてからアトリエも家も作務=掃除を徹底的に取り組んでおります。


思考が固まらないようにきものの世界以外の世界に遊ぶことしばし、考え方生き方も風通しよく行きたいものです。


今山科の工房、わが新しき城は僕のやりたいことやりたかったこと満載で毎日が楽しく思っております。


しかしそこは本業をしっかりやりつつの遊びであってこそ。

遊びとは本業が経糸とすれば横糸そのもの。遊びとは経験値でありお稽古事のようなもの。


様々な経験を練り上げてこそ模様が彩られる、それこそが作家の創作であり醍醐味、魅力だと思っております。


チャレンジとは創作に他ならず、開発そのもの。

開発とはトライ&エラーの繰り返し、不確定要素の踏み潰し、これぞ!という瞬間のための地道な作業。

寧ろ磨くという表現の方が近いのかもしれませんが。


常に新しいことは考えていても花開くものはほんの一握り、野球なら3割バッターならば超一流なのだ。

その意味で泥臭くもがくことや失敗は無駄ではない。


作家はプレイヤーと言えるけれど日々のお稽古や練習で遊び、引き出しが多いほどアジャストする成果を発揮出来るはず、そう!数字はあとからついて来ると信じて。


しかしその開発やチャレンジには「遊び」が必要不可欠ではあるものの567禍の現在、開発にばかりこだわるわけにはいかない。

コストもかけられないけどクオリティは下げられない。

その意味で払い清めがひとつの物語として完結する茶道や能の舞台は偉大だ。

さて!そんなこんなの徒然でスタートした水無月の朔。


今月も宜しくお願い致します。